■まずは電車で山麓まで
ツークシュピッツェ Zugspitzeは標高2962m、ドイツの最高峰である。

山登りはドイツ鉄道(DB)のガルミッシュ パルテンキルヒェン駅のすぐ隣から発車するツークシュピッツ鉄道 Zugspitzbahn に乗るところから始まる。

出発してほどなく電車が右に向きを変えると、車窓は牧草地帯に変わる。電車は心地よい空気を車内に取り込みながら快適な速度で走り、アルプス交響曲の”Der Anstieg(登り道)”が聞こえてくるようだ。3つほど小さな駅に停車した後、電車はグライナウ Grainauに到着する。

■いよいよ登山の始まり
ガルミッシュ パルテンキルヒェンで乗った車両はここが終点で、乗客はアプト式の電車 Zugspitz-Zahnradbahnに乗り換える。この電車では、進行方向右側に席を確保することがポイント。少しずつ勾配が急になりいよいよ本格的な登山が始まる。電車はまず山麓の森の中を進み、さしずめ”Eintritt in den Wald(森に入る)”の雰囲気である。

森をぬけるとアイプゼー Eibsee駅。この駅を出発すると一段と勾配は急になる。中腹の駅では何人かの登山客が降りた。右側の車窓、遥か下にアイプゼーが見える。

■小鳥の歌声で目覚める湖畔のホテル
アイプゼーはツークシュピッツェの麓、標高約1000mのところにある湖で、夏場は水遊び、冬場は凍った湖面でスケートなどの氷上レジャーが楽しめる。この湖畔にあるアイプゼーホテル Eibsee Hotel は本格的なリゾートホテルで、客室は湖を望むSeeblick、最高峰を望む Zugspitzblick、そして森を望むWaldbrickに分類される(部屋代はSeeblickが一番高い)。

アイプゼー湖畔から眺めるツークシュピッツェはとても印象的で、特に、夕陽を浴びて輝くその姿は言葉に表すことができないほどの美しさである。宿泊客は、夕日の後、静かに夜の闇に沈んでいく山々を眺めながら夕食をとり、翌朝、鳥の声で目覚めることができる。

■頂きに至る、二つの道
ここからツークシュピッツェの頂上へは、もう一度アプト式電車に乗り込み、山頂近くの終点駅 Zugspitzplatt で短いロープウェイ Gletscherbahn に乗り換えて山頂 Zugsputzgipfel に到着するという方法と、ここから長いロープウェイ Eibsee-Seilbahn に乗り、直接山頂に到着するという二つの方法がある。

長いロープウェイならば約10分、高度差1950mを人々は文字どおり昇って行きアイプゼーはあっという間に下界となる。森林限界を超えるとロープウェイは急な岩肌に沿って上昇し、アルプス交響曲の「氷河 Auf dem Gletscher」や「危険な瞬間 Gefahrvolle Augenblicke」のフレーズを一瞬思い起こさせるが、すぐに頂上駅に到着する。

■さらに電車とロープウェイで頂上へ
アプト式電車はアイプゼー駅を出発した後、トンネルに入る。「わがまま歩きドイツ(実業之日本社刊)」によればトンネルの中に「ベルリンの上2000m」という表示があることになっており、確かにそれらしい表示があったがこれが本に書いてあるとおりの左側なのか、文言が正しいかは一瞬のことでよく分からない。終点駅 Zugspitzplatt もトンネルの中である。ここからは頂上まで高度差350mを短いロープウェイで登ることになる。

急いでロープウェィに乗り換えて一気に頂上へ・・・というのは日本的発想か?山頂行ロープウェイの出発まで20分あるということで、山並を眺めたり、付近を歩き回ったりする。ここにはドイツで一番高いところにある教会がある。

やっと出発時間になり、ロープウェイに乗り込む。いよいよ頂上だ!

注 アプト式:通常のレールの間に設置された歯車レールと、車輪と車輪の間にある歯車が噛み合いながら走行する電車のこと

文と写真渡邉 慶知

写真の説明(上から)
1: Zugspitzbahnのガルミッシュ・パルテンキルヘン駅
2: 牧草地を走る
3: 森の中を走る(Zahnradbahn)
4: アイプゼーとアイプゼーホテル
5: 西日に輝くツークシュピッツェ
6: アイプゼーに日が沈む
7: ツークシュピッツプラットのレストハウス
8: 山頂へのロープウェイ

 
渡邉 慶知
当団楽団員・ホルン奏者
 

■目次
第1部:序章〜ガルミッシュ・パルテンキルヘンへ
第2部:Der Anstieg -- 昇っていく
第3部:Auf dem Gipfel -- 山の頂にて
第4部:Ausklang -- エピローグ